果実と存在という薬


蝉の鳴き声
青い空をバックに綺麗に咲き誇る向日葵
授業の間に聞こえてくる水の音
一日の半分以上を照らしている太陽

冬が月の季節なら
今、
最も太陽が活躍している季節は



テストも終わり、後は夏休みと言う長期の休みに備え
計画を立て、今か今かと待ち望むと共に
教師陣からのたっぷりの宿題と成績表という
不安なモノを貰うが、やっぱりまじかに迫っている楽しみ
が大きくて、落ち込んでいた気分なんかどこかに行ってしまった。

も皆と同じ様に、九州に来ての初めての長期の休みに
友達であると共に色々な計画を立て、家に帰り
夏休み直前に貰った成績を親に見せると、

今度はもう少し頑張るように

と、父親から一言、言葉を貰うと
心のどこかに合った
怒られるのではないか
と言う不安が消え去り、安堵しこれからの夏休みを愉しむ
ハズだったが、毎日会って話をしていた一と昭栄と話す事が出来ず
寂しさを感じていた。

会いに行ったり、電話をすれば話す事は出来るのだが
一はサッカー、昭栄はバスケ
毎日練習しているのを知っているし、
疲れて帰ってくる一の姿を見ているので
昭栄も一緒だろうと思うと
会いに行く事もできず、電話する事も出来ずにいる。

だが、一は隣りに住んでいるという事もあって
毎朝の両親に見送りの時に会って挨拶をするのと
夜、窓越しに話をしているので、少しは寂しさが紛れるが
その分、いつもより長く話してしまう為、一の就寝時間は
確実に遅くなっていた。

昨日もなんでもない話を長々としてしまっていた。
一は文句を言わないでの話を聞いていたし
もお風呂上りという事で何時もよりリラックスした感じで
話していた。
お互い、窓を閉め就寝したのは日にちが変わってしまう
時間に近かった。

そしてこの事がイケなかった。

何時もの時間に目を覚ましたものの
体がだるく、重い感じがするしノドも痛い・・・
風邪でも引いたかなぁ
そんな風に考えながら、キッチンに入り、テーブルに座っている
父親に挨拶をして、朝食を作っている母親の元に行くと
の異変に気付いた母親がの額に手で触った。

「熱が出てるわねぇ・・・夏風邪かしら?
 とりあえずココはいいから、座っていなさい」

心配そうな声に頷き、父親のいるテーブルに行くと
新聞を読んでいた父親と視線が合い

「顔色が悪いな。朝食を食べたら直ぐに寝なさい」

眉間にシワを寄せながらの言葉に、頷き
母親が持ってきてくれた体温計を受け取ると
急いで作られたであろう、卵が入っているお粥が
前に置かれ、数回スプーンですくい取り口に運ぶが
中々ノドに入っていかず、無理やり飲み込みのが精一杯だった。

数回食べた食事が自分の中で異物としてしか
受け入られず、吐き気がする中、母親から手渡された薬を飲むと
体を無理やり動かし、自室にあるベットに体を沈め、
目を閉じると、すぐさま闇に覆われ眠りに付いた。

いつだっただろう・・・・・・

玄関のチャイムがなって、宅急便屋さんが荷物を持って
尋ねて来て、その後リビングのソファーに座り
重くなった瞼を閉じてしまった。

そうしたら、何時の間にか一先輩に背負われて
階段を上がっていた。

大きな背中から、暖かい温もりを感じながら
揺れる体が気持ち良く、再び眠りの世界に足を踏み入れ
かけた時に重い体が落とされ、クッションがあったのか
軽く身体が跳ね、意識が戻ってくると、声が降ってきた。

?大丈夫とね?」

「・・・・・は・・・い・・・・・・」

意識がゆっくりと戻ってくる中、重い意識を
動かし、痛むノドで声を出すと、一の表情が
歪んだが、そんなそぶりを見せ無い様に
の部屋の中を見渡しながら話掛けられた。

「昼は食べたと?」

「気持ち悪くて食べる気がしないんです・・・・・」

「薬まだかとね?」

「・・・・はい」

「そげんことやで、風邪が治らんとよ・・・・・」

の返事を聞くと、ため息を付きの部屋を出て
行くと、階段を下りる足音が聞こえたが
段々聞こえなくなっていった。

重たい頭を使いながら考える事は
どうして一先輩が家にいるんだろう・・・・・

そんな事を考えてみるものの、答えは出ず
片手に小鉢を持った一がの前に現れ
小鉢を机の上に置き、寝ているの上半身を
起すと、小鉢に入っているモノを食べる様に
差し出した。

「桃たい。少しでもハラに入れれば薬が飲めると」

差し出された小鉢の中に入っている桃を
フォークを使って口の中に入れると
甘い果実汁が口一杯に広がり、疲れていた身体が
桃を食べる後とに元気になっていく気がしてきた。

小鉢に入っていた桃を完食して、両手を合わせると
一から栄養ドリンクに様な茶色い小ビンが差し出された。

「あの、これは?」

「薬たい。どの薬より効くハズちゃ」

足し出された小ビンを受け取り、口に流し込むと
甘くて粘りがある液体が口の中に後味を残しながら
体の中に入っていった。

「なんだか子供用シロップの味に似てますねぇ」

「そげんモン飲んだ事ないけん、言われても解らん」

「そうなんですか?」

「あぁ、俺が小さい頃からコレたい。
 そげん事はどうでもよか!
 も俺としゃべとらんで早よ寝るたい」

一の言葉に頷きベットに横になるが
が先ほどの疑問が思い付き、言葉にすると

「朝、おばさんとおじさんに会って
 が風邪で寝てるから心配で・・・・
 と言っとったけん様子を見に来たら
 リビングで寝取とったんでココまで運んだと」

「カギは閉まってませんでしたか?」

「開いとった」

「え?」

「おばさんから預かっとったカギ挿してみたと
 そげんしたらカギが閉まったけん、もう一度
 回したら開いたと」

ポケットから出されたカギをにさし出し
説明をしてくれた。

「そうだったんですか・・・
 ご心配お掛けしてすいません・・・・・・・」

申し訳なさそうに誤ってくる

「別によか、それだけしゃべれれば大丈夫ちゃな
 なんなら、残ってる桃食べると良いたい」

「いえ、折角なので一先輩が食べて下さい」

「俺はいらん。剥いてくるから待っとれ」

そう言うと、が使った小鉢を持って再び
階段を下りていった。

暫くすると、階段を上る足音が聞こえ
一を出迎える為に上半身を起こし
自室のドアを見ていると、小鉢を持った一が
入ってきた。

の笑顔で迎えられると一は無言で
小鉢をにさし出し、

「ありがとうございます」

と、礼を言いながら受け取り、桃を食べ始めると
一の視線に気付き、一の顔を見ながら
フォークに刺さった桃を差し出すと
ニラまれ

、コレを俺にどぎゃんしろと言うと?」

「食べて下さい」

すかさずも笑顔で言葉を返すと

「これぐらい1人で食べれるたい!」

差し出されたフォークをの手から奪い取ると
刺さっていた桃を一口で食べた。

そんな一の様子を先ほどと変わらない笑顔で見ながら
は持っていた小鉢を一に差し出し

「私は一杯食べましたから、今度は一先輩が
 食べて下さい」

言ったものの一は受け取らずが持っている小鉢から
桃をフォークで刺し、食べ続けていたが急に食べるのを止め
桃の刺さったフォークをに向けながら

「食うか?」

言うと、は嬉しそうに微笑み
一の持つフォークから桃を食べた。

「ご馳走様でした」

軽く頭を下げ言うと、一は無言のまま残っていた
桃を食べ始めた。

カラになった小鉢はの机の上に置かれ
先ほどと同様、を寝かせ、2人で話をする。

の話に一が頷く
そして
時々、一の話をが聞き色々な表情を見せた。

暫くすると薬が効いてきたのかは寝てしまい
一はカバンの中から雑誌を取り出し読み始めた。

高くて地上を照らしていた太陽は消え
変わりに優しく光輝く月が出てくると
を起さない様に、机の上にあるライトを付け
雑誌を読み続けていると、玄関から帰宅を意味する
言葉が聞こえ、一は読んでいた雑誌をカカバンに仕舞い
を起さない様に気を付けながら離れ、下の階に
下りて行くと、帰ってきたばかりのの両親に挨拶をして
自分の家に戻った。

半日以上、と一緒に居たが、帰ってからの生活は
変わらず、夕食を食べ、TVを見て、風呂に入って自室に入り
カーテンを閉めよと窓に近寄ると、が窓を開け
一に手を振っている姿が目に入り急いで窓を開けると

「こんばんわ。一先輩」

にっこり笑って挨拶をしてきた。

、お前はソコでナニをしとると?」

怒っていますと言う雰囲気を発しながら言うと

「一先輩にお礼を言おうと思って待ってました」

かわらぬ笑顔で返してくる

「礼なんかいらん!!は風邪をひいとんのやぞ
 そげん事したら悪化するやろ!さっさと寝ろ!」

の呑気とも取れる笑顔に一の喝が入ると
嬉しそうなまんべんの笑みで

「桃、ありがとう御座いました。おやすみなさい」

「大人しく寝ろ!、解ったな!」

の挨拶に一の注意が入り今夜の話は終った。

記憶に残る、甘い香りと果実汁を思い出しながら
熱の残る体をベットに沈め、目を閉じ、
明日には治っている事を核心して眠りについた。